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皆さんこんにちは!
株式会社田中空調設備、更新担当の富山です。
目次
今回は、空調・換気システムの要とも言える「ダクト工事」におけるトラブル事例と、それに対する具体的な対策を詳しくご紹介します。
ダクト工事は、建物の中を快適に保つための“呼吸器官”のような存在です。しかし、一見見えない箇所であるがゆえに、設計・施工・メンテナンスのどこかで不備があると、目に見えない形でじわじわと不具合が広がっていきます。
トラブルが起こってからの修繕は大がかりになることも多く、初期段階の正確な設計と丁寧な施工が極めて重要です。
ある事務所ビルで、空調ダクトが各フロアへ配管されたにもかかわらず、「エアコンの効きが悪い」「風がほとんど来ない」といったクレームが多発。調査の結果、設計時の風量計算が甘く、主要ダクトが細すぎたことが判明しました。
設計段階でのCFD(流体解析)やシミュレーション不足
テナントレイアウトの変更に対して、風量再調整をしなかった
現場の都合でダクトサイズを変更したまま、調整不足で施工完了していた
施工前に空調負荷と風量を再計算し、シミュレーションツールを使って流れを事前確認
現場の制約に応じてダクトルートが変更された場合は、設計変更と構造補正を速やかに連携
施工後、各末端で風量測定を実施し、バランス調整(ダンパー制御など)を徹底
ワンポイント!
現場では「収まり優先」で小径に変更されがちですが、風速や静圧の関係から空調効率が著しく低下するケースも。設備図と現場寸法を“同時に確認”する文化が重要です。
某ビルの地下駐車場に設置された排煙ダクトで、火災訓練時に“煙が予想以上に拡散”してしまうというトラブルが発生。
点検の結果、複数のダクト接合部でシール材が適切に施工されておらず、空気漏れが多数確認されました。
コーキング材やシールテープの貼付忘れ、または規定未満の処理
ダクトの熱伸縮による経年劣化(特に天井裏や機械室まわり)
硬化や剥離したシーリング材が、風圧で飛散・破損していた
ダクトの接合時には規定のシール材(ネジ止め+コーキング)を併用
施工後に**エアリークテスト(気密試験)**を実施して漏れを可視化
点検時に接合部を触診・赤外線カメラ・煙テストで確認し、経年劣化を早期発見
ワンポイント!
見た目はきれいに仕上がっていても、**目に見えない「内部漏れ」**は意外と多く、これが原因で空調効率が5〜20%ダウンするケースも珍しくありません。
特に「冷暖房が効かない」と言われる建物の多くで、ダクト漏れが見落とされていることがあります。
【事例】天井ダクトを通じて「ゴーッ」「ヒューヒュー」という音が部屋に響く。
【対策】ダクト内面に吸音材を設置するか、風速を下げて気流音を抑える。
【事例】排煙用ダクトが天井裏で塞がっていたり、ダンパーが開閉しない。
【対策】排煙ダンパーの定期点検義務を遵守し、可動状況を半年ごとにチェック。
【事例】軽量天井に施工された軟質ダクトがたるみ、空気が正しく流れない。
【対策】サドル支持・バンド固定を強化し、1mピッチ以下の間隔で支持を徹底。
トラブルを防ぐには、何よりも設計・施工・点検の三位一体の体制づくりが必要不可欠です。
以下のチェックリストを元に、社内・協力業者との連携強化を図りましょう。
設計風量と計算が最新の建物レイアウトに基づいているか
ダクトサイズ、ルート、材質が現場制約に適応しているか
特殊条件(高温環境・排煙用途・消音要件)を満たしているか
接合部の締結状態、シール処理が図面通りか
支持金具や吊りボルトの強度・耐震仕様が適切か
断熱処理(特に冷媒配管周辺)が確実に行われているか
エアリーク試験または煙テストを実施しているか
風量・静圧測定でバランス調整されているか
メンテナンス口の確保や点検経路の整備がなされているか
ダクトは単なる配管ではなく、建物の空気の流れ・温度・快適性・安全性を担う極めて重要な設備です。
一見地味に思われがちですが、適切なダクト設計と丁寧な施工が、快適なオフィスや店舗、住宅を支えているのです。
次回もお楽しみに!